潰瘍性大腸炎(UC)

下記のような症状が続いていませんか?

  • 血が混じった便が出る
  • 粘液便や下痢が続く
  • お腹が痛む
  • 発熱がある
  • 貧血気味
  • 体重の減少が見られる

これらの症状が複数ある場合、潰瘍性大腸炎の可能性も考えられます。
気になる症状がある方は、一度医療機関へのご相談をご検討ください。

潰瘍性大腸炎とは

大腸および小腸の粘膜に、慢性の炎症 または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性の炎症およびびらんや潰瘍を形成する大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、慢性的な下痢や血便(粘血便)、頻繁に起こる腹痛です。粘血便とは大腸の粘膜から分泌される粘り気のある液(粘液)を含む血便です。よく、イチゴジャムのような血便と表現されます。
病変は直腸から連続性に口側へ広がる性質があり、病変の広がりにより直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類されます。

発症のピークは15歳~35歳頃とされていますが、乳幼児や高齢者での発症も認めます。原因については明らかになっていません。省内細菌や免疫機構、食生活の変化などの関与が指摘されていますが、原因は不明です。厚生労働省より指定難病に認定されており、病状により医療補助の対象となっています。
多くの場合、適切な治療を行うことにより、良好に病状をコントロールし、安定した日常生活をおくることが可能です。

潰瘍性大腸炎にみられる症状

大腸の炎症により、主に以下のような症状が現れることがあります。

  • 血便(粘血便):便に血液が混ざります。粘液に血液が混ざったイチゴジャムの様な「粘血便」がみられることもあります。
  • 下痢:頻回に下痢を起こします。軟便~水様性まで様々です。
  • 腹痛:慢性的な腹痛を感じることがあります。特に、便意と共に痛みが増強する「しぶり腹」を伴うことがあります。
  • 発熱:潰瘍性大腸炎の病状の悪化に伴い発熱することがあります。
  • 貧血:大腸粘膜の炎症部位から出血しすることで貧血になることがあります。
  • 体重減少:食事摂取量の低下、下痢等による摂取エネルギーの体外への喪失、炎症によって腸からの栄養吸収が妨げられることにより体重が減少することがあります。

その他、関節炎や皮膚疾患(結節性紅斑など)、眼疾患(虹彩炎など)、口内炎など腸管外の症状(腸管外合併症)がみられることもあります。

潰瘍性大腸炎の要因

潰瘍性大腸炎の原因ははっきりしていません。現在、以下のような因子の関与が指摘されています。

  • 免疫機能の異常
  • 腸内環境の変化
  • 食生活や生活習慣の欧米化
  • 遺伝的素因

遺伝的背景だけでなく、環境因子や生活習慣など複数の要因が重なることで発症につながると考えられています。

潰瘍性大腸炎の治療について

潰瘍性大腸炎に対する根治的な治療方法は確立していません。
潰瘍性大腸炎による症状の改善および大腸粘膜の炎症の改善を目的とし内服での治療が開始されます。内服治療でも改善しない場合や病状によっては外科的な治療が選択される場合もあります。

内科的治療

5-アミノサリチル酸(5-ASA)

最初に検討・選択される薬剤です。内服薬と肛門から投与する薬剤があり、病状や病変の範囲により薬剤を選択します。大腸粘膜に直接作用することで炎症を抑え、下痢、血便、腹痛などの症状を軽減します。5-ASAは軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、 再燃 予防にも効果があります。

副腎皮質ステロイド

内服薬と肛門から投与する薬剤、血管内に投与する薬剤があります。この薬剤は中等症から重症の潰瘍性大腸炎で使用され、強力に炎症を抑えます。しかし、再燃を予防する効果はなく長期的な投与は勧められません。

血球成分除去療法

血液中の異常に活性化した白血球を取り除くことで大腸粘膜の炎症を改善左折治療です。血液透析のような治療です。副腎皮質ステロイドで治療効果が得られない活動期の治療に用いられます。有効であった場合はその後の維持治療も可能となりました。

免疫調節薬または抑制薬

中等症から重症の潰瘍性大腸炎で、ステロイドを減量もしくは中止すると病状が悪化してしまう場合に使用されます。

抗TNFα拮抗薬

炎症を引き起こすサイトカインであるTNFα(腫瘍壊死因子α)の働きを抑えることで、大腸粘膜の炎症を抑制する生物学的製剤です。中等症から重症の潰瘍性大腸炎で使用され、点滴や皮下注射により投与されます。寛解導入・寛解維持療法ともに使用可能です。

接着分子を標的とした治療

炎症部位への移動を促す白血球の接着分子の働きを阻害することで大腸粘膜の炎症を抑制します。

抗インターロイキン12/23p40抗体薬、抗インターロイキン23p19抗体薬

炎症を引き起こすサイトカインであるインターロイキンを抑制することで大腸粘膜の炎症を抑制します。

ヤヌスキナーゼ阻害薬

炎症性サイトカインが細胞に作用する際のシグナル伝達に不可欠な酵素であるヤヌスキナーゼを阻害することで炎症反応を抑制します。

外科手術

重症の潰瘍性大腸炎で内科治療が不可能な場合、大量の出血がありコントロールが不可能な場合には外科的な治療が選択されることがあります。

当院での対応について

検査開始
当院では、血便や下痢が続く方に対しては、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)を実施します。検査で血便や下痢の原因となる病気が見つかることがあります。その一つに、潰瘍性大腸炎あります。潰瘍性大腸炎と診断された場合は、適切な治療をご提案し開始いたします。
軽度から中等度の症例には、内服治療を中心とした寛解導入療法を行っております。必要に応じて、地域の医療機関と連携し、入院や専門的治療が必要な場合にも対応できる体制を整えています。また、安定した状態の方には、通院頻度の調整を図りながら、外来での管理を継続しています。
定期的な内視鏡検査を行い、治療の効果判定を行います。

日常生活での注意点

潰瘍性大腸炎は、長期にわたりつきあっていく必要がある病気です。以下のような生活習慣が症状の安定に役立つ場合があります。

  • 規則正しい生活を心がける
  • 過度なストレスを避ける
  • 感染症の予防に努める
  • アルコールやカフェインの摂取を控える(活動期)

病気との付き合い方には個人差がありますが、無理のない範囲でできることを取り入れていくことが大切です。

よくあるご質問

Q. 潰瘍性大腸炎とクローン病の違いは?
A. 潰瘍性大腸炎は主に大腸の粘膜に炎症が起こる病気ですが、クローン病は消化管のあらゆる部位に病変が生じる可能性があります。治療方針や経過も異なるため、専門的な診断が重要です。
Q. 潰瘍性大腸炎とストレスの関係は?
A. ストレスそのものが直接的な原因とはされていませんが、体調の変化や症状の悪化のきっかけになることがあります。
Q. 日常生活でできる予防法はありますか?
A. 現時点で明確な予防法は確立されていませんが、生活習慣の改善や早めの受診が病状の管理に役立つことがあります。