過敏性腸症候群(IBS)の症状
- お腹のあちこちが痛むことがある
- 下痢と便秘を繰り返してしまう
- お腹が張っている
- おならがよく出る
こうした症状が継続して見られる場合、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。
過敏性腸症候群とは

ストレスや感染性胃腸炎などがきっかけとなることがあり、日本でも比較的多くの方がIBSに悩まされているとされています。
症状に悩まされ医療機関を受診し各種検査をしても「異常なし」と言われ、一人で悩まれている方が多くいらっしゃいます。症状が続き生活に支障がおありの方は、当院へご相談ください。
過敏性腸症候群の原因について
IBSの発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、ストレスや腸内環境の変化などが関与していると考えられています。腸の運動と脳とは密接に関連しており、精神的な負荷によって腸の動きが過敏になることがあります。
また、腸内細菌のバランス変化や、感染性胃腸炎なども関連しているとされています。こうした要因が重なり、腸の知覚も過敏になることで、普通では問題とならない日常的な刺激にも不快感を感じるようになります。
過敏性腸症候群の分類
IBSは、便の形状とその頻度により「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」に分類されます。
便秘型IBS(IBS-C) | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの |
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下痢型IBS(IBS-D) | 軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの |
混合型IBS(IBS-M) | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの |
分類不能型IBS | 便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの |
過敏性腸症候群の診断と治療
まず症状や既往歴を詳しく伺うことから始まります。その上で、採血検査や腹部超音波検査、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)などを行い、他の疾患を除外する必要があります。
大腸がんや炎症性腸疾患などの器質的疾患が除外されたのちに、過敏性腸症候群(IBS)と診断されます。
IBSと診断された場合は、症状に応じて内服薬の使用を検討します。
治療の一環として、以下のような生活習慣の見直しも重要です。
- 食事のバランスを整える(脂質や刺激物の摂りすぎに注意)
- 発酵食品や食物繊維を取り入れる(体質やタイプにより異なります)
- 十分な睡眠・休養を確保する
- 喫煙や過度の飲酒を控える
- 適度な運動を行う
個々の体調や症状に応じた取り組みを一緒に考えていくことが大切です。
過敏性腸症候群の食事療法としての低FODMAP食
FODMAP(フォドマップ)は、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称です。
FODMAPは以下の食品の頭文字を合わせた言葉です。
F(Fermentable):発酵性の
O(Oligosaccharides):オリゴ糖(玉ねぎなど)
D(Disaccharides):二糖類(ヨーグルト、牛乳など)
M (Monosaccharides):単糖類(蜂蜜、果物など)
A(and)
P (Polyols):ポリオール(人工甘味料キシリトールなど)
過敏性腸症候群の方は、高FODMAP食(FODMAPを多く含む食事)を摂取することで、腹痛や腹満感、便秘や下痢などの症状が悪化することがあります。高FODMAP食を避けることで、症状の改善が期待できるとの報告があります。
全ての過敏性腸症候群の方に効果がある訳ではありませんが、薬物療法や心理療法、生活習慣の改善など、他の治療法と併用することで症状が改善する可能性があります。
高FODMAP食品には、以下のようなものがあります。
これらの食品の中で、よく摂取するものをまず3週間程控えることで、症状が変化するか確認してみましょう。
穀物 | 小麦、ライ麦、大麦、パン、ラーメン、パスタ、うどん、そうめん とうもろこし、ピザ、お好み焼き、たこ焼き、ケーキ、パイ、パンケーキ 焼き菓子 |
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野菜・いも まめ類 | 玉ねぎ、ニンニク、カリフラワー、アスパラガス、ブロッコリー、セロリ、 キムチ、マッシュルーム、ゴーヤ、ねぎ、さつまいも、らっきょう、 たろいも、ごぼう、ニラ、豆類、納豆、小豆、絹ごし豆腐、キノコ類 |
果物 | りんご、梨、マンゴー、スイカ、アボカド、チェリー、プルーン、干しぶどう、あんず、もも、グレープフルーツ、ライチ、柿、西洋梨、さくらんぼ、 いちじく、すもも、プラム、ドライフルーツ、パパイヤ |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルクチョコレート、プロセスチーズ、カッテージチーズ、ブルーチーズ、クリームチーズ、プリン、コンデンスミルク |
肉・魚類 | ソーセージ、加工肉、魚の缶詰 |
ナッツ類 | ピスタチオ、カシューナッツ |
甘味料 調味料 | ハチミツ、フルクトース、ソルビトール、キシリトール、カレーソース、 オリゴ糖、バルサミコ酢、トマトケチャップ、バーベキューソース、カスタード、固形スープの素、わさび、きな粉 |
飲み物 | アップルジュース、マンゴージュース、オレンジジュース、梨ジュース ウーロン茶、ハーブティー、麦芽コーヒー、カモミールティー、 ハチミツ入りジュース、エナジードリンク、マルチビタミンドリンク、ポートワイン、ラム、甘いワイン、りんご酒 |
低FODMAP食品の例としては、以下のようなものがあります。
これらの食品を積極的に取り入れることで低FODMAP食を実践してみましょう。
穀物 | 米、玄米、米粉、オートミール、オート麦、そば(10割)、タピオカ、 ポップコーン、ビーフン、フォー、タコス |
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野菜・いも まめ類 | にんじん、トマト、ほうれん草、チンゲン菜、白菜、ズッキーニ、きゅうり、じゃがいも、しょうが、レタス、パクチー、なす、ミニトマト、 ブロッコリー、セロリ、かぼちゃ、キャベツ、きゅうり、オクラ |
果物 | バナナ、いちご、ブルーベリー、キウイ、パイナップル、オレンジ、ラズベリー、クランベリー、レモン、ぶどう、ライム、ココナッツ、スターフルーツ、 ドラゴンフルーツ、ドリアン、キンカン、メロン |
乳製品 | アーモンドミルク、バター、マーガリン、ゴルゴンゾーラチーズ、 モッツァレラチーズ、パルメザンチーズ、カマンベールチーズ、チェダーチーズ、ブリーチーズ |
肉・魚類 | 卵、ベーコン、ハム、肉全般、魚全般 |
ナッツ類 | ヘーゼルナッツ、栗、くるみ、ピーナッツ |
甘味料 調味料 | マヨネーズ、ソース、酢、メープルシロップ、ココナッツオイル、味噌、 オリーブオイル、ココア、魚油、カレー粉、唐辛子、バジル |
飲み物 | 紅茶、コーヒー、麦茶、緑茶、レモンジュース、ライムジュース、 クランベリージュース、ジン、ウォッカ、ビール、ウイスキー、 甘くないワイン、タピオカティー、水、日本酒 |
よくあるご質問
Q:ストレスとIBSには関係がありますか?
A:はい、精神的ストレスは腸の運動や感受性に影響を与えるとされており、IBSと関連があると考えられています。ストレスマネジメントは治療の一助となります。
Q:市販薬での対応は可能ですか?
A:市販薬での根本的な治療は難しいとされており、まずは医師による診断と治療計画の提案を受けることをおすすめします。
Q:食事の工夫にはどのようなものがありますか?
A:便秘傾向の方には食物繊維を含む食材、下痢傾向の方には消化の良い食事が推奨されます。また、低FODMAP食を試してみることもいいでしょう。ただし、体質によって個人差がありますので、無理のない範囲で調整していきましょう。