大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープとは

「ポリープ」とは病気の名前ではなく、イボのように膨らんで見える粘膜の総称です。つまり、「大腸ポリープ」は、大腸の粘膜(内側の粘膜)の一部がイボのように隆起してできたものの総称です。大腸ポリープには、大腸がんや大腸腺腫といった「腫瘍性ポリープ」と、炎症性ポリープや過形成性ポリープ、過誤腫性ポリープといった「非腫瘍性ポリープ」に分類されます。

大腸ポリープは治療が必要?

全ての大腸ポリープが治療の対象となるわけではありません。
大腸ポリープには、将来「大腸がん」になる可能性のあるポリープと、そうでないポリープとがあります。「がん」にならないポリープについては、出血など何らかの症状を引き起こす場合には切除することがありますが、多くの場合は治療の必要はありません。

「大腸がん」になる可能性のあるポリープとして、腺腫とSSL (sessile serrated lesion)とがあります。
検査で最も多く発見されるポリープは「腺腫」です。
この「大腸腺腫」は次第に大きくなり、「がん」になるといわれています(adenoma-carcinoma sequence)。そのため、「大腸腺腫」を小さいうちに切除することで、将来の「大腸がん」の予防につながります。
また、近年、大腸がんの原因として注目されているポリープにSSLがあります。専門家の中でも意見は分かれていますが、SSLも腺腫と同じように、大腸がんになる可能性があるとされています。「大腸がん」になるリスクについてはどの程度か詳細にはわかっていませんが、切除することにより「大腸がん」を予防できると考えられます。

大腸ポリープの主な症状

大腸ポリープは、大きさにかかわらず、多くの場合自覚症状はありません。そのため、大腸ポリープを見つけるためには大腸カメラ検査が必要であり重要となります。

大腸ポリープの原因は?

大腸ポリープができる主な原因として、遺伝子の異常が考えられています。大腸の正常な粘膜に、がん抑制遺伝子であるAPC遺伝子の異常が生じることでポリープになり、またがん遺伝子であるK-ras遺伝子の異常でポリープが成長、がん抑制遺伝子であるp53遺伝子の変異でがん化すると考えらえています。
ただ、遺伝子の異常だけで大腸ポリープができるのではなく、外的要因も必要と考えらえています。外的要因としては、年齢(50歳以上)、家族歴(家族に大腸がんを患った人がいる)、加工肉の摂取、肉食傾向、高カロリーな食事や肥満、過度な飲酒、喫煙などが指摘されています。このような外的要因が遺伝子異常を引き起こしポリープやがんができると考えられています。

大腸ポリープの治療

まず、大腸ポリープの治療には「正確に診断」し、診断に応じて「適切な治療法」を選択することが必要となります。
まず切除が必要なポリープかどうか、ポリープの形態やできている場所、粘膜の模様を観察し判断します。切除が必要と判断した場合、どのような方法で切除すべきかを検討します。当院で切除可能と判断した場合は、その場で切除を行います。
しかし、「がん」を疑うような場合、出血の可能性が高く入院での治療が必要と判断した場合は、観察だけにとどめ、提携する基幹病院へご紹介いたします。
当院で行っている主な切除の方法は、「Cold snare polypectomy(CSP)」です。ポリープに金属性の輪っか(正式名称 スネア)をかけ、ポリープを周囲の粘膜ごと切除します。
これまでは、電気を流し粘膜を焼灼することでポリープを切除していました。この方法を「Hot snare polypectomy(HSP)」といい、現在もサイズの大きなポリープや、茎の太いポリープの切除などに利用されます。HSPでは大きなポリープを切除できる反面、熱により組織が変成し切除後しばらくたってから出血したり、穿孔(腸に穴があく)してしまうことなどが問題でした。それに対し、CSPは通電せずに切除するため、切除後の出血や穿孔のリスクがほとんどなく、安全に切除できます。
当院では、大腸内視鏡検査の際に指摘したポリープは、検査中に切除する「日帰り手術」を行っております。ポリープの切除のために入院は必要ありません。当院では例外*を除き、検査当日に切除します。

*茎の太い有茎性ポリープ、10ー15mm以上のポリープ、「がん」を強く疑う病変は皆様の安全と病変の根治性を考慮し、提携する基幹病院へご紹介いたします。

大腸ポリープは、多くの場合症状はありません。何らかの理由で内視鏡検査をして初めて見つかるケースが大半です。血便が出た方や下腹部痛がある方はもちろんですが、大腸がん検診(便潜血検査)で陽性になった方などは、必ず大腸内視鏡検査は受けるようにしましょう。

大腸ポリープの対策

大腸ポリープは大腸カメラ検査を行わなければ見つけることはできません。40歳を過ぎたら一度は検査を受けることをお勧めします。

大腸ポリープ日帰り手術について

大腸カメラの検査中に大腸ポリープを認めることがあります。
大腸ポリープには、将来がん化する可能性があるものがあります。そのため、癌化する前に切除することをお勧めします。
事前にご希望された方については、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)時に大腸ポリープの日帰り手術を行います。

選択可能な大腸カメラ前の腸内洗浄について

大腸カメラの検査前には、下剤の服用し大腸内をきれいにする(腸内洗浄)必要があります。
この下剤服用に抵抗を感じる方が多くいらっしゃいます。現在、各製薬メーカーより、複数の下剤が提供されております。下剤に対する好みは、個人個人で大きく異なります。当院では複数の下剤を準備し、少しでも抵抗なく下剤を服用できるよう準備しております。
また、「どうしても下剤が服用できない。」とおっしゃる方も一定数いらっしゃいます。そのような方に対し、当院では「自身で下剤を服用しない方法での腸内洗浄」による大腸カメラについても対応しております。下剤服用ができないことで、検査を回避されていらっしゃった方は、一度当院へご相談ください。
*適応基準がございます。ご希望の方、どのように検査するのか、お知りになりたい方は、検査前診察の際にお申し出ください。

大腸がんについて

大腸ポリープの早期発見ができなかったら…

大腸がんは、大腸の粘膜表面に発生するがんの一種です。
多くの場合、大腸がんはポリープが成長する過程で生じるとされています。ポリープが徐々に大きくなるにつれて、一部の細胞ががん化し、数年をかけてがんへと変化することがあります。このため、早期に小さなポリープを摘出することが、大腸がんの予防にとても重要です。
一方で、極めてまれに、ポリープを経由せず正常な粘膜から直接発生する「de novoがん」と呼ばれるタイプも存在します。この場合、がんの進行が速く、悪性度が高い傾向があります。ただし、ほとんどの大腸がんはポリープを経由して発生するため、内視鏡検査でポリープを早期に発見し、除去することが非常に大切です。

大腸がんの主な症状

初期段階の大腸がんでは、ほとんど症状が現れません。
進行した場合でも、がんの大きさによっては症状が出にくいことがあります。ただし、がんが大きくなると、出血や便の通りの悪化による便秘が起こることがあります。
また、大腸の内腔が狭くなると、便が細くなったり、便が崩れて下痢になることもあります。ただし、これらの症状が見られた場合でも、必ずしも大腸がんとは限りません。

大腸がんの原因

大腸がんの主な原因は、腺腫と呼ばれる腫瘍性ポリープが長期間かけて徐々に大きくなり、がんに進展することとされています。このタイプは大腸がん全体の約9割を占めます。
大腸の粘膜細胞に複数の遺伝子変異が生じ、それがポリープの形成を引き起こし、さらに大きくなる過程でがん化します。この進行は通常10年ほどかかると言われていますが、一部では短期間でがん化する場合もあります。
遺伝的な要因に加え、果糖や加工肉(例:ソーセージ)、乳化剤、トランス脂肪酸などの食生活や生活環境の影響も、遺伝子異常を引き起こす一因と考えられています。

大腸がんの治療

早期の大腸がんでは、がん細胞が大腸の粘膜の表面近くにとどまっている場合、内視鏡による切除が可能です。この場合、お腹を切るような手術は不要で、比較的負担が少ない治療が行えます。ただし、がんが粘膜の深い部分にまで浸潤している場合や進行がんの場合には、外科的手術が必要になることがあります。
また、大腸がんの進行度に応じて、抗がん剤を用いた化学療法が併用されることもあります。この治療は、がんの再発や転移を防ぐため、また進行がんの進行を抑える目的で行われます。