機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアとは
胃の痛みや胃もたれ、胸やけ、吐き気などの不快な症状が長期にわたって続いているにもかかわらず、内視鏡検査などの詳細な検査で異常が見つからない場合、「機能性ディスペプシア(FD)」と診断されることがあります。
この症状は「機能性胃腸症」とも呼ばれ、かつては「神経性胃炎」や「ストレス性胃炎」として知られていました。また、明らかな炎症がないにもかかわらず「慢性胃炎」と診断されることもありました。
自覚症状があるにもかかわらず、炎症やその他の異常が確認できない疾患として、非びらん性胃食道逆流症(NERD)や過敏性腸症候群(IBS)なども挙げられます。
これらはそれぞれ異なる特徴を持っている病気ですが、症状にいくつかの共通点があります。たとえば、非びらん性胃食道逆流症(NERD)と機能性ディスペプシア(FD)では、どちらも胸や胃に不快感が生じる点が似ています。ただし、NERDでは主に食道、つまり胸の上部に不快感が集中し、FDでは胃やみぞおち、つまりお腹の中央部に不快感が生じるのが特徴です。

機能性ディスペプシアの原因

1. 胃・十二指腸の運動機能異常

胃に食べ物が溜まり、その先へと送られる機能に異常があるケースです。送られるタイミングが早すぎたり、遅すぎたりすることで、症状が現れます。ストレス、過食、不規則な食生活、喫煙、アルコール摂取などがそのリスク要因になると言われています。
また大腸の動きが悪く、便秘気味の方もディスペプジアの原因になりやすいです。

2. 胃・十二指腸の知覚過敏

健康な方の胃や十二指腸は症状が出ませんが、わずかな刺激が誘因で症状が出やすいケースです。
また十二指腸内の胃酸や脂肪に対し、症状が出る場合もあります。

3. ストレス・トラウマ

脳と腸管の機能は、互いに影響し合っています(脳腸相関)。そのため、強いストレスを抱えることで、腸の機能が阻害されることがあります。過去に受けた虐待のトラウマが、機能性ディスペプシアの原因になることもあります。

4. その他

ヘリコバクター・ピロリ菌感染や感染性胃腸炎などの疾患、遺伝、喫煙習慣、アルコール摂取、不眠などを原因として、症状が現れることがあります。

機能性ディスペプシアの治療法

機能性ディスペプシアの治療では、投薬と生活習慣・食習慣の改善が重要です。
薬物療法
薬物療法

症状に応じた治療法として、以下のような薬を使用することがあります。まず、胃酸の分泌を抑える薬として、PCAB(ボノプラザン)やプロトンポンプインヒビター(PPI:エソメプラゾールなど)、H₂ブロッカー(ファモチジンなど)が挙げられます。これらの薬は、過剰な胃酸分泌を抑制し、胃の不快感や胸やけを軽減します。
また、胃の運動機能を助ける薬としては、アコチアミドやモサプリドクエン酸が使用され、消化の促進をサポートします。さらに、六君子湯などの漢方薬が有効とされる場合もあり、胃腸の働きを整える役割を果たします。
場合によっては、抗うつ薬や抗不安薬(スルピリドなど)が症状の緩和に役立つことがあります。特に、ストレスや精神的要因が症状の悪化に関わっていると考えられるケースでは、これらの薬が効果を発揮することが多いです。
また、ピロリ菌に感染していることが確認された場合には、ピロリ菌の除菌治療を行い、症状の改善を図ります。

生活習慣の改善
食事療法

規則正しい生活を送ることで、自律神経のバランスを整え、胃腸の機能低下を改善することが期待できます。特に、胃腸の動きが低下している場合には、十分な水分を摂り、小分けにゆっくりと食事をすることが大切です。このような工夫をすることで、消化器への負担を減らし、症状の改善につながります。
また、胃に優しい食事習慣も重要です。具体的には、よく噛んで食べること、食べ過ぎを避けること、そして食後すぐに運動を控えることが有効です。これらの習慣を取り入れることで、胃腸の負担を軽減し、快適な消化を促進することができます。